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経理の属人化|手順書を作っても直らない理由と、崩す順番

キーワード: 経理 属人化 | シメゴ(運営: Never Red株式会社)

「経理が属人化していて困っている」というご相談は、ほぼ同じ言い方で始まります。「あの人しか分からないんです」。そして続けて、たいていこう言われます。「手順書を作らせようとは思っているのですが」。

先に申し上げると、手順書を作っても属人化は止まりません。何度も見てきました。分厚いマニュアルができあがり、それでも締めのたびに同じ人が呼ばれる。理由ははっきりしていて、属人化しているのは作業ではなく、判断だからです。手順書に書けるのは作業のほうです。

この記事は「その人しか分からない」状態を崩したい方に向けて書いています。担当者が辞める・産休に入るなど、引き渡す日が決まっている場合は経理の引き継ぎのほうが具体的です。時間があるうちに崩しておきたい、が本記事の想定です。

まず、属人化しているかを測る

「うちは属人化している気がする」で終わっている会社が多いので、判定を先にします。私が最初に聞くのは次の3つです。全部その場で答えられます。

質問属人化していない場合属人化している場合
担当者が今日から1週間休んだら、何が止まりますか止まるものを列挙でき、代わりに動く人の名前も出る「たぶん全部」「考えたことがない」と返ってくる。名前が出ない
先月の締めで、その人が判断したことは何件ありましたか判断が要った箇所と、その基準を説明できる「特に判断はしていないはず」と返る。実際は毎月発生しているのに、誰も把握していない
取引先からの問い合わせに、その人以外が答えられますか資料を見れば経緯を追える「本人に聞かないと分からない」。経緯が本人の記憶の中にしかない

2つめが本丸です。「特に判断はしていない」と答えられた会社ほど、深く属人化しています。判断が無いのではなく、判断が担当者の中で自動化されているから、周囲から見えないだけです。この見えない判断が、手順書を作っても残る部分です。

属人化が生まれる4つの経路

属人化は担当者の性格の問題ではありません。私が見てきた限り、原因はほぼこの4つのどれかで、いずれも会社側の任せ方の結果です。

経路何が起きているか見分け方
人数が1人しかいない分けようがないので、全部その人に集まる。悪意も怠慢もない、構造的な帰結経理担当が1名、または実質1名(もう1名は入力補助のみ)
例外処理が口頭で積み上がっている「A社だけは請求書を月末締めで出す」「この費目は部門を分けて計上する」。個別の約束が、記録されずに担当者の中に溜まる取引先ごとの特別扱いが、契約書やシステムのどこにも書かれていない
本人が抱え込みで評価されてきた「あの人がいれば安心」と言われ続けた結果、渡すことが自分の価値を下げる行為になる。合理的な反応です引き継ぎの話をすると、表情が硬くなる。資料の共有を後回しにされる
システムの権限が1人に寄っている会計ソフト、銀行、給与、経費精算。管理者IDを1人が持ち、他の人は画面すら開けない「見せてください」と言ってすぐ見られない画面がある

3つめだけは、対応の順番を間違えると悪化します。本人を責める話に聞こえた瞬間、情報はさらに出てこなくなります。抱え込みが起きている会社では、崩す前に「この人を外すためではない」と会社側から明示するところから始めてください。実際、崩したあとに残ってもらうケースのほうが多いです。

手順書を作っても直らない理由

マニュアル整備が空振りする理由は、はっきりしています。手順書に書かれるのは「何をするか」で、属人化しているのは「なぜそうするか」だからです

たとえば「A社の請求書は毎月25日に発行する」と書いてあるとします。ここまでは誰でも書けます。ところが、実際に必要なのは次の情報です。

この4つが書かれていない手順書は、平常月しか回りません。そして経理で人を呼び戻す事態が起きるのは、いつも平常でない月です。手順ではなく、判断とその理由を残す。これが属人化を崩す作業の中身です。

書き方の型は経理マニュアルの作り方にまとめています。要点だけ言うと、作業の各行に「この行で迷ったことはあるか」を書き足していくやり方が、いちばん早く判断が出てきます。

崩す順番:手順書より先に、月1回の交代

順番があります。私は次の3段階でお願いしています。上から順にやると、下の工程が軽くなります。

1|まず、業務を行に分ける

属人化を崩す前に、何が属人化しているのかを行にします。経理業務の一覧を使って、月次で発生する作業を並べ、各行に「今これができる人の名前」を書き込んでください。

ここで多くの会社が気づくのは、全部が属人化しているわけではないことです。入力や振込データの作成はもう1人でもできる。属人化しているのは、消込のズレを追う作業、月次の異常値を見つける作業、取引先との個別のやり取り。この3種類に集中していることが多いです。

全部を崩そうとすると終わらないので、止まると困る行から順に手をつけます。判定基準は単純で、その行が1か月止まったときに社外に影響が出るかどうかです。

2|月1回、別の人が回す日を作る

これがいちばん効きます。そして、いちばんやられていません。

手順書を書いてから交代するのではなく、交代しながら手順書を書きます。順番が逆です。別の人が実際に手を動かすと、手順書に足りない箇所がその場で全部あぶり出されます。詰まるたびに、担当者に聞いて、その答えを書き足す。これを3か月やると、平常月に必要な情報はほぼ埋まります。

相手は経理経験者でなくて構いません。総務の方でも、代表ご自身でも構いません。むしろ分かっていない人がやるほど、暗黙の前提が出てきます。「この画面のどこを見ればいいんですか」という質問が、そのまま手順書の見出しになります。

やり方の注意点は2つです。1つは、担当者に横で見ていてもらうこと(先に説明させると、また口頭で流れます)。もう1つは、月1回を固定日にすることです。「余裕があるときに」にすると、余裕のある月は来ません。

3|そのうえで、外に出す行を決める

1と2をやると、行ごとに「社内で回せる/本人しかできない/外に出せる」が分かれます。ここまで来てから、外部に出す範囲を決めてください。

順番を逆にして、属人化したまま丸ごと外に出すと、属人化の相手が社外に移るだけです。委託先の担当者しか分からない状態になり、契約を切り替えられなくなります。これは前より悪い状態です。渡す範囲の考え方は経理を丸投げできる範囲に整理しました。

やってはいけない崩し方

実際に失敗を見てきたやり方です。どれも善意で始まっています。

シメゴの考え方:抜くのではなく、片方を外に置く

経理代行をやっている立場で言うと、属人化した経理を丸ごと引き受けるのは、実はこちらにとって楽な仕事です。範囲が曖昧なまま預かれば、こちらの言い値になりやすい。それでも、私たちは行を分けてからでないとお引き受けしないようにしています

理由は単純で、丸ごと預かった会社は数年後に必ず困るからです。何をどうやっているか社内の誰も分からない状態で、契約だけが続く。それは属人化が解消したのではなく、属人化の場所が社外に移っただけです。私たちを切り替えられない会社を作ってしまったら、それは仕事として失敗だと思っています。

私たちがお勧めしているのは、作業は外、承認と例外の判断は社内という置き方です。日々の記帳や支払データの作成をこちらで持ち、実行の承認と、例外の取り決めは社内に残す。こうすると担当者が休んでも作業は止まらず、かつ会社の中に判断が残ります。1名体制でも、この形なら分離できます。

すでに外に出すか社内に戻すかで迷っている場合は、経理の内製化経理アウトソーシングのメリット・デメリットもあわせてご覧ください。

まとめ

経理の属人化は、担当者の問題ではなく任せ方の結果です。だから、本人に手順書を書かせるだけでは動きません。

崩す順番は、業務を行に分ける、月1回だけ別の人が回す、そのうえで外に出す行を決める、の3段階です。とくに2番目が効きます。交代してから手順書を書くと、書けていない箇所が自動的に見つかります

そして、属人化したまま丸ごと外注しないでください。相手が社外に変わるだけで、状態は悪くなります。

どの行が属人化しているか分からない、担当者が1名で分けようがない。その状態からで構いません。無料コスト診断で今の業務と体制を伺い、行ごとに「社内に残す/外に出す」を分けた表をお作りします。崩す順番も一緒に決めましょう。

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1名体制のままでも、作業と承認は分けられます。まず現状を見せてください。

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※本記事は一般的な実務の整理であり、個別の税務判断や、特定の体制・契約内容の適合性を保証するものではありません。決算・申告に関する最終的な判断は顧問税理士に、雇用契約・人事評価・休職の取り扱いに関することは社会保険労務士等の専門家にご相談ください。