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経理業務フローの作り方|止まるのは工程ではなく「つなぎ目」である

キーワード: 経理業務フロー | シメゴ(運営: Never Red株式会社)

「経理業務フローを作りたいんです」とご相談をいただいて、まず現状のものを見せてくださいとお願いすると、出てくるのはたいてい担当者の作業手順書です。会計ソフトを開いて、この画面でこう入力して、印刷して、ファイルに綴じる。丁寧に書かれているものほど、そうなっています。

これは書いた人が悪いのではありません。フロー図と手順書は、目的も主語も違う別の道具なのに、どちらも「業務を書いたもの」として同じ引き出しに入っているからです。そして手順書としてフローを書くと、いちばん知りたいことが図に出てきません。どこで止まっているのかです。

私は会計システムの導入を仕事にしてきました。プロジェクトの最初にやるのは、ほぼ必ず現状フローの整理です。そこで毎回同じことが起きます。工程そのものは誰も遅れていないのに、月次は遅い。遅れは工程の中ではなく、工程と工程のあいだ、つまりつなぎ目に溜まっている待ち時間だからです。この記事では、そこが見えるフローの書き方を、中小企業の規模感で書きます。

経理に「何の仕事があるか」を棚卸ししたい段階の方は、先に経理業務の一覧をご覧ください。この記事はその次、棚卸しした仕事が誰から誰へどう渡るかを1枚にする話です。

フロー図と手順書は、別のもの

最初に道具を分けます。ここを混ぜたまま作業を始めると、どれだけ時間をかけても使えない図になります。

 業務フロー図作業手順書(マニュアル)
目的仕事の受け渡しと詰まりを見る同じ作業を再現できるようにする
主語複数(現場・経理・承認者・社外)ひとり(担当者本人)
粒度1工程=1行。画面操作は書かないクリック単位まで書く
読む人経営者・他部門・引き継ぐ人その作業をやる人
使う場面体制を変える/外に出す範囲を決める担当が休む/新任が入る

つまり、フロー図に会計ソフトの画面名が並び始めたら、それは手順書に寄っているというサインです。手順書のほうも必要ですが、そちらは判断基準を書き残すことが要点で、書き方も別になります。詳しくは経理マニュアルの作り方に整理しました。

経理の流れは、3つの周期が重なっている

経理業務フローが1枚に収まらない原因のひとつは、周期の違う仕事を同じ紙に並べようとすることです。日次・月次・年次を分けて描き、それぞれの接点だけをつなぐと、格段に読めるようになります。

周期主な流れ次の周期へ渡すもの
日次入出金の記帳、請求書の受領、経費申請の受付、売上計上のもとになる情報の受け取り仕訳と証憑がそろった状態
月次請求書の発行、入金消込、給与の反映、締めと試算表の確定、経営への報告確定した月次残高
年次決算整理、税務申告のための資料づくり、年末調整、償却や引当の確定次年度の予算・方針の前提

この3段の表を書いただけで、多くの会社が気づくことがあります。日次でやっておくべきことを月末にまとめてやっている、という点です。とくに請求書の受領と経費の受付。届いた順に処理していれば日次の仕事ですが、机の上に積んでおくと、そのまま月末の山になります。作業量は同じでも、山にすると必ず待ち時間が生まれるので、月次が遅くなります。

止まるのは4つのつなぎ目

フローを書く目的は、この4か所を可視化することです。私が見てきた範囲では、遅れの原因はほぼここに集約されます。

つなぎ目1|現場から経理へ

いちばん大きな詰まりです。営業が契約書や検収の情報を出すまで、購買が請求書を回すまで、経理は着手できません。ここが遅れているのに、経理の作業効率を上げようとする改善が始まってしまうことがよくあります。

フローには必ず「誰が、いつまでに、何を出すか」を行として書く。経理の中の工程だけを描いた図は、この行が抜けているので、原因が経理にあるように見えてしまいます。

つなぎ目2|経理の中の工程間

担当が2名以上いる場合、記帳が終わるまで消込に入れない、といった依存が生まれます。順番に意味があるなら書くべきですが、実は同時にやれるのに慣習で直列になっていることも少なくありません。フローに並べて初めて、そこが判断できます。

つなぎ目3|経理から承認者・経営へ

ここを見落とすと、フローは「経理の作業が終わった時点」で終わってしまいます。実務では、承認をもらうまでの往復が数日入ることがあります。承認者が出張中で止まる、質問が来て差し戻される。この待ち時間が図に載っていないと、改善の対象になりません。

つなぎ目4|経理から社外(税理士・銀行・取引先)へ

顧問税理士へ資料を渡す日、銀行へ試算表を出す期限、取引先との支払サイト。社外の締切は動かしにくいので、社内の締切をそこから逆算することになります。フローの右端に社外のレーンを1本足しておくと、逆算の起点がはっきりします。

書き方:5つのステップ

ステップ1|理想ではなく、先月の実際を書く

最初から「あるべき姿」を描き始めると、ほぼ間に合いません。まず先月1か月に実際に起きたことを、日付とともに時系列で書き出す。差し戻しがあったなら差し戻しも書く。イレギュラーな支払いがあったならそれも書く。汚い図になりますが、汚さがそのまま改善点です。

ステップ2|4列で書く

凝った作図ツールは不要です。表計算ソフトで次の4列を埋めるだけで、フローとして十分に機能します。

書くこと
いつ日付または「〇営業日目」翌月3営業日目
誰が役割名。個人名ではなく役割で書く営業担当
何を受け取る/出すやり取りされる情報や書類検収済みの報告と請求金額
次に誰へ渡す受け手の役割名経理担当

「誰が」を個人名で書かないのは、個人名で書くと属人化がそのまま図に固定されるからです。役割名で書くと、「この役割は本当にこの人でなければ回らないのか」という問いが自然に立ちます。

ステップ3|待ち時間を書き込む

ここが本題です。作業時間ではなく、受け渡しの間に空いている日数を書きます。作業自体は30分でも、前工程から届くまで4日空いていることがあります。この4日が本当のボトルネックです。

この4行を数えると、合計日数のうち作業時間はごく一部で、残りは待ち時間だったという結果になることが多いです。月次が遅い会社ほど、そうなります。締めの手順そのものは月次決算のやり方と早期化で整理していますが、フローを書く段階では「どこで待っているか」だけに集中してください。

ステップ4|例外を別枠に出す

フローが読めなくなる最大の原因は、例外を本流に描き込むことです。前受・前払の按分、相殺やまとめ入金、値引きの承認、部門をまたぐ按分。これらを分岐として本流に書くと、線が交差して誰も読まなくなります。

やり方は単純です。本流は「例外がない場合の一本道」だけを描き、例外は別表に一覧で持つ。別表には、どういう条件で発生するか、誰が判断するか、判断のもとになる資料は何かを書きます。この別表が、そのまま引き継ぎ資料になります。

ステップ5|1枚に収める

最後に、A4またはA3で1枚に収めます。分量が入り切らないのは、粒度が細かすぎるか、周期を混ぜているかのどちらかです。1枚に収まらないフロー図は、会議で使われないので存在しないのと同じになります。

よくある詰まり方と、直しどころ

フローに現れる症状本当の原因先に手をつけるところ
月末に工程が集中している日次でできる仕事を溜めている受領と申請の入り口を1本にし、届いた順に処理する
同じ情報を2回入力している台帳が部門ごとに分かれている取引先マスタと請求台帳をどちらか一方に寄せる
矢印が特定の1人に集まる判断が集中している(属人化)判断基準を文章にして、金額基準で権限を下げる
差し戻しの線が何本もある提出時のルールが決まっていない受付の条件(添付・但し書き)を先に定義する
承認の待ちが数日ある承認者が1人・順番が直列代理承認を決め、金額で段数を変える
社外との締切が逆算されていない社内締切を先に決めている税理士・銀行の期限から逆算し直す

上の表で共通しているのは、直しどころが会計ソフトの中にほとんどないことです。効率化の手順は経理業務の効率化で別途書いていますが、フローを書く価値は、投資すべき場所が「ソフト」ではなく「入り口とルール」だと自分の会社の図で確認できることにあります。

フローが書けると、決まることが3つある

  1. 属人化がどこにあるか:矢印が集まる役割が属人化の中心です。人の性格の問題ではなく、フローがそう組まれていると分かります
  2. 引き継ぎの範囲:担当者が抜けるとき、どの行が止まるかが図で特定できます。引き継ぎ書を白紙から書く必要がなくなります
  3. 外に出せる線:定型で判断を伴わない行と、判断が必要な行が分かれます。この線が、そのまま外注の切り出し線になります

3つ目について補足します。外注の検討は「経理をまるごと出すか、出さないか」で考えると話が進みません。フローの行単位で見ると、出せる行と出せない行がはっきり分かれます。どこまで任せられるかの境界は経理は「丸投げ」できる?にも書きました。

やってはいけない3つ

  1. 作図ツールの選定から始める:見た目が整うほど、中身の議論が減ります。まずは表計算ソフトの4列で足ります
  2. あるべき姿だけを描く:現状の待ち時間が書かれていない図は、改善の前後を比べられません。比べられない図は使われません
  3. 経理部門の中だけを描く:いちばん大きな詰まりは現場から経理へのつなぎ目にあります。経理の中だけ描くと、原因が経理にあるように見えてしまいます

シメゴの考え方:フローは、外注の見積書より先に作る

ご相談をいただいたとき、私たちが最初にお出しするのは料金表ではありません。いまの経理が、どこから始まってどこで止まっているのかを1枚にした図です。理由は単純で、これがないと見積もりが正しく出せないからです。

「記帳をお願いしたい」というご依頼をそのまま受けても、たいていうまくいきません。記帳が遅い原因が、現場から情報が出てこないことにある場合、記帳の担い手を替えても日数は変わらないからです。フローを書くと、外注すべき行が最初の想定とずれることがよくあります。私の経験では、記帳よりも入金消込と請求書発行のほうが効くケースが多いです。

正直に書くと、この図を作る作業でいちばん時間がかかるのは作図ではなく、担当者への聞き取りです。手順書に書かれていない判断が、必ず出てきます。「この取引先だけは請求書を月末にまとめる」「この費用は部門を按分する」。こうした暗黙の運用が、フローを書く過程で初めて言葉になります。それ自体が、引き継ぎと外注の準備になっています。

まとめ

経理業務フローで書くべきものは、作業の並びではなく情報の受け渡しです。会計ソフトの画面名が並び始めたら、それは手順書に寄っているサインだと考えてください。

手順は5つです。先月の実際を時系列で書き出す。「いつ/誰が/何を受け取るか/次に誰へ渡すか」の4列で書く。作業時間ではなく待ち時間を書き込む。例外は本流から出して別表に持つ。最後に1枚に収める。役割名で書き、個人名では書きません。

そして、遅れは工程の中ではなく4つのつなぎ目(現場→経理/経理内の工程間/経理→承認者・経営/経理→社外)に溜まっています。ここが図に載っていれば、その図は使われます。

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※本記事は一般的な実務の整理であり、個別の税務判断や、特定のソフト・体制の適合性を保証するものではありません。決算・申告に関する最終的な判断は顧問税理士にご相談ください。